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音楽を聴くだけ!?新しい聴覚リハビリの可能性

2025/09/2

こんにちは、plus-STの渡邉です。

感音性難聴に対する聴覚リハビリテーションに、新しい選択肢が生まれるかもしれません。

 

広島大学大学院医系科学研究科および広島大学病院の研究グループが、ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社聴脳科学総合研究所の協力を得て、「音楽聴取を活用した聴覚リハビリ」の効果実証を行いました。

音楽を聴くだけ

1日1時間 高音域を明瞭に再現するデバイスで好きな音楽を聴取し騒音下の“聞こえ”が改善 | ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社のプレスリリース

 

こちらの研究は、感音性難聴者を対象に行われました。

高音質な音響デバイスで1日1時間音楽を聴くことで難聴者の脳が活性化し、騒がしい環境でも言葉が聞き取りやすくなる効果が確認されたとのことです。

専用デバイスが必要ではありますが、補聴器の常時装用が難しかったり抵抗があったりする方にとっては朗報ではないでしょうか。

 

現時点では、この明瞭聴取音療法が聴覚皮質における神経反応を活性化し、年齢を問わず難聴者の騒音下における音声知覚能力の改善に繋がったことが示されています。

今後の展開として、最適な使用時間や期間の特定、補聴器との比較による満足度の評価など、より実践的な条件下での効果検証、長期的な効果や持続性の確認に取り組むと記事は締められています。

 

なお、この研究で使われた『明瞭聴取音』とは、高音域を強調し歪みを抑えた高精細音とのことです。

具体的にどういった音楽なのかを聴くことはできませんが、今回は1日1時間×35日間聴き続けられたとのことで、少なくとも不快さを感じる音楽ではないのだと思います。

感音性難聴の苦しみ

聴覚障害は、ただでさえ周りから見えにくい障害です。

さらに感音性難聴は、音を大きくしただけでは解決されない問題でもあります。

補聴器の装用が実用的ではない、かといって簡単に人工内耳も埋め込めないという患者さんも、たくさん見てきました。

 

しかし、今後この治療法や聴覚リハビリテーションの技法が実用化されれば、高齢者も含めてより手軽に言葉の聞き取りが可能になるでしょう。

もちろん、難聴者のみなさんが聴きたい音は、言語音だけではありません。

ですが、日常生活・社会生活において最も優先度が高いのは、言語音だと言えます。

実用化された暁には、若い人だけではなく、「年齢を重ねたからしょうがない…」「今さら治療なんて必要ない…」と諦めてしまわれた高齢者の方にも、ぜひ試していただきたい方法です。

さいごに

こういったテクノロジーの進化やそれを可能にする人々の熱意、企業努力により、今後も新しい治療法やリハビリテーションの技法がどんどん生まれていくことと思います。

わたしたちはそういった情報をキャッチしながら、目の前の患者さんに使えるものはないか、日々学びをアップデートする必要があるでしょう。

 

今回ご紹介した研究も、おそらくさらなる研究が重ねられ、何年先かはわからないものの実用化が期待されます。

また情報を掴み次第、こちらでもご紹介しますね。

執筆者:渡邉睦美(言語聴覚士)

このコラムでは、臨床や経験に基づくこと、豆知識、問題提起など様々なトピックを扱います。
執筆者は企画の和久井のほか、色々な職場・働き方・ジャンルで活躍されている言語聴覚士に依頼していく予定ですので、リクエストもお待ちしています。
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