パーキンソン病のリハビリは180日の期限がない?【指定難病申請、受給者証のメリットについて】
2024/08/13こんにちは、plus-STの和久井です。
今回は、パーキンソン病のリハビリの算定期限についてや、「特定医療費(指定難病)受給者証」を取得することによるメリットなどについてまとめました。
目次
パーキンソン病のリハビリ期限に関して、白本に載っていること=『別表第九の八』
白本とは・・・改定診療報酬点数表参考資料の見た目からとった通称で、診療報酬改定があるたびに配布される資料です(が、分かりやすくまとめられて伝達を受けることの方が多く、実際にはあまりページをめくったことがないです…)。
まずはこちらのリンク先をご覧ください。(PT-OT-ST.NET様より)
リハビリの算定日数上限の除外対象者についての記載ですが、ざっくりいうと『ここに載っている病気であれば、算定日数の上限は関係ないよ!』ということが書いてあります。そのため、失語症や、パーキンソン病と診断されていれば(診断だけではなく、難病医療費助成制度の申請がされている(=Yahr3以上である)ことでより確実に)、「別表第九の八第二号」に該当するため、180日の算定上限から除外され、継続してリハビリを受けることができます(=180日超えで算定できます。医療保険内、月13単位までが基本です。それ以上は病院既定の自費診療になるのが一般的かと思います。)。
難病医療費助成制度とは?申請のしかた、メリット(難病申請)
さて、難病医療費助成制度とは何でしょうか?平たく言えば、『難病にかかっているという申請をすることで色々な助成が受けられるよ』という制度なのですが
「特定医療費(指定難病)受給者証」があることで受けられるメリットや、どうやって申請したらよいのか等は製薬会社さんのサイトが見やすくまとまっていますのでご紹介します。
医療費が2割負担になること、色々な支援が受けやすくなること、ほぼ確実にリハビリ算定上限から除外される(よほどのことがない限り返戻がない)ことが大きなメリットとして考えられます。
デメリットとしてはパーキンソン病という病名をご自身が受け入れなければいけないこと(心理的・社会的な問題)と、保健所などの申請窓口に行ったり、書類を郵送したりなどの手間があること、更新の都度、医師による書類(臨床個人調査票)の提出が必要なことなどでしょうか。
公的支援制度を知り、より早期にリハビリ(特に運動療法)を導入する=症状の進行予防が期待できる
2014 年のPD 患者に対する アンケート調査(在宅パーキンソン病患者の介護保険サービス利用状況と 運動療法実施状況に関するアンケート調査)では、介護保険サービス利用率は67.0%、医療機関での運動療法未経験者が51.6%存在し、医療機関以外で定期的に運動療法を実施していない者が37.4%とのことでした。運動療法の実施機会が確保されず廃用を来した結果としての機能低下や、運動が自己流になるために過用や誤用に陥ることが懸念されています。
実際クリニックで患者さんに話を伺うと、なかなか運動機会が持てなかったり、運動=『外に出て歩くこと』のイメージが強かったり、「これでいいのかな」と思いながら自主トレをしていたりと、動くことに関してもそれぞれに悩みや迷いを抱えていらっしゃいます。ことばに関しても同じことが言えます。家にいると発話機会が少なく、歌を歌う場所もなく、そのような場合いつの間にか機能が低下してきてしまっていることが多いです。
言語・嚥下の自主トレは指導が入ることが少なく、なおさら自己流であることが多いと思われます。
とりわけ言語聴覚士はまだまだ少ないので、直接患者さんを評価・指導することももちろんですが、例えば郊外に赴き、集団で指導・伝達し、定期的にフォローするなどの連携の仕組みも必要かもしれません。
パーキンソン病患者さんの外来個別リハビリは、全国でどれだけの数の施設でできるようになっているのだろうか?
進行性の神経疾患のリハビリが外来でできる場合、疾患の特性上患者数は減ることがほとんどなく増えていきますので、交通アクセスのよい場所であれば経営としては難航しないと思われるのですが、なぜ「リハビリもできる脳神経内科のクリニック」が身近に多く存在しないのかは分かりません。(自費のリハビリ施設やジムやリハビリ特化型デイサービスは増えている印象です)
また、全国規模でパーキンソン病の個別リハビリをどれだけの数の施設でできるようになっているのか?などの調査や医療資源マップの作成はされていないと思われます。(地域レベルではマップなどを見かけることがあります。)しかしこれに関しては、医師会などにまとまった報告がないか等ちゃんと調べてみる必要がありそうです。
私が勤務するクリニックは、少し遠くても『通いでリハビリができる』『言語のリハビリができる』『病気を理解してもらいながら、楽しくリハビリができるのが嬉しい』と通ってきてくださる患者さんが多いです。
全国各地で、パーキンソン病をはじめとした進行性の神経疾患のリハビリ(=医療機関での運動療法・言語療法)ができるようになるといいなと思っています。
このコラムでは、臨床や経験に基づくこと、豆知識、問題提起など様々なトピックを扱います。
執筆者は企画の和久井のほか、色々な職場・働き方・ジャンルで活躍されている言語聴覚士に依頼していく予定ですので、リクエストもお待ちしています。
コミュニティもしくは 「お問い合わせ」フォームまで、皆様のご意見・ご感想をお待ちしています!
執筆者 和久井和佳子(言語聴覚士)
【略歴】
2010年 言語聴覚士 取得
・公益社団法人発達協会(療育指導)・東京さくら病院(回復期病院)
2014-2022年 順天堂東京江東高齢者医療センター
・施設訪問自費リハビリ(業務委託)・支援学級指導員(非常勤・東京都)
・訪問リハビリ(非常勤・東京都)・児童発達支援事業所(非常勤・東京都)
2022年10月〜 新浦安内科・脳神経内科クリニック(常勤・外来リハビリ・千葉県浦安市)