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言語聴覚士とハンドサイン

2025/03/18

こんにちは、plus-STの渡邉です。

言語聴覚士として働くみなさん、手話は習得していますか?

私は簡単な単語をいくつか知っているだけで、手話で会話はできません。

しかし、「言語聴覚士なら手話できるでしょ?」と言われたことは数知れず…。

日常的に手話を使って職務に取り組む言語聴覚士の方は少ないと思いますが、いつか使う日が来るかもしれないので、手話を含む3つのハンドサインをまとめました。

手話

日本で手話について取り扱う際、『日本手話』と『日本語対応手話』の2種類に触れると思います。

ここでは両者の違いについては言及せず、まるごと『手話』とひとくくりにして扱わせてください。

 

手話は、聴覚障害者同士の会話で使われたり、彼らと話したいときに聴者が使ったりする言語です。

主に手指や上腕などを使ったサインと、表情などを駆使して表現されます。

日本での市民権は得ており、その姿を見れば発話内容はわからずとも“手話を使っている”ことはほとんどの人が理解できるでしょう。

NHKでは手話ニュースが毎日放送されており、ネット上で閲覧することも可能です。

聴覚障害者が使うサインのなかでは、もっともなじみ深いものではないでしょうか。

指文字

指文字は、日本語の五十音図を指で表したものです。

付け加えると、濁音・半濁音・拗音・促音・長音の表現も決まっています。

固有名詞を伝えたいときや手話表現がわからないときなどに便利です。

数が決まっているので、無限に広がる手話表現を覚えるよりもハードルが低いでしょう。

私は学生時代にテストがあったため指文字はマスターしていますが、使う機会がなかなかないのでど忘れすることも多いです。

 

なお、指文字さえ使いこなせれば聴覚障害者と会話できるかというと、現実的ではありません

理由は、1文字ずつの表現なので時間がかかったり単語の区切りがわかりにくかったりすること、読み取る方も労力を使うことなどが挙げられます。

指文字には似たような表現があり、素早く動かしてしまうと読み取れないといった事態も起こるのです。

また、日本語は文法上最後に述語が配置されるので、いつまで続くかわからないひらがなの羅列を集中して見続けることは、会話上の大きなストレスです。

そのため、聴覚障害者と会話をしたいのであれば、指文字+手話の習得が望ましいでしょう。

マカトン法

耳にしたことはあるけれど、詳細は知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

日本マカトン協会

上記サイトから抜粋すると、マカトン法とは、言語やコミュニケーションに問題のある子どものために英国で開発され、世界の40ヵ国以上で使われている言語指導法です。

手話は言語そのものですが、マカトン法は言語を獲得するための指導法である点が大きな違いと言えます。

また、マカトンサインだけではなく、マカトンシンボルと呼ばれるシンプルな線画と話しことばの3つを駆使する点も違います。

はじまりは子どもが対象でしたが、現在、マカトン法のふるさとである英国では、言語・コミュニケーションに課題を抱える成人のほか、彼らと接する家族・友人・教師・医療関係者などにも広まりを見せているそうです。

さらにその目的も、コミュニケーションを促進すること、言語能力を伸ばすこと、読み書きの力の習得を促すこと、英語を母国語としない方を支援することなど、多岐に渡っています。

日本においても日本版が作られ、日本マカトン協会が中心となりワークショップやセミナーが開催されています。

 

なにも聴覚障害や発達障害をお持ちの方だけのものではありません

私は以前、聴覚障害も発達障害もないわが子のためにマカトンサインを学んでいるママと出逢ったことがあります。

ベビーサインをきっかけにマカトン法を知り、学びたくなったとおっしゃっていました。

興味のある方は、日本マカトン協会のサイトを覗いてみてください。

さいごに

私は学生時代の臨床実習で、表出は手話のみ・理解は手話と文字言語という患者さまのリハビリを見学させていただいたことがあります。

担当の言語聴覚士さんは元々手話ができませんでしたが、その方のために短期集中で手話を学び、なるべく文字言語ではなく手話での発信を心掛けておられました。

理由を尋ねると、その患者様はご高齢で文字を読むことにとても苦労されている様子が窺えたからと教えてくれました。

自分次第で患者様の苦労が減り満足度が上がるのなら、そのための努力を惜しまない姿勢に深く感銘を受けたことを覚えています。

 

1日で手話のすべて・指文字のすべて・マカトン法のすべてを身に付けることは不可能です。

しかし、できるところから1つずつ覚え始めることが大切だと思います。

そして、(私の指文字のように)使わなければ忘れてしまうのが人間なので、機会を見つけて使い続けることも重要なのだと感じているところです。

執筆者 渡邉睦美(言語聴覚士)

このコラムでは、臨床や経験に基づくこと、豆知識、問題提起など様々なトピックを扱います。
執筆者は企画の和久井のほか、色々な職場・働き方・ジャンルで活躍されている言語聴覚士に依頼していく予定ですので、リクエストもお待ちしています。
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