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AIにはできない患者さんとの関わり ~“聴く”ということ~

2025/12/2

こんにちは、plus-STの渡邉です。

前回、AIについてのコラムを書きました。

そこで今回は、AI時代にわたしたち人間にしか果たせない役割について、もう少し深掘りしようと思います。

「話を聴いてくれる人」

わたしたち言語聴覚士は、その職務の性格上、患者さんとじっくり対話する機会が多いです。

もしかしたら、患者さんに関わる医療職のなかでも1番長く、患者さんの話を聴いているかもしれません。

 

だからこそ患者さんからも、「話をよく聴いてくれる人」「こちらの思いを受けとめてくれる人」として見られていることが多いように思います。

そしてその印象のよさは、評価や訓練の技術よりも、“どう聴くか”という姿勢から生まれるものであり、そこにこそAIとの差が生じるのではないでしょうか。

 

もちろん、AIだってわたしたち人間のことばを理解し、励ましてと言えば励ましてくれるし、慰めてと言えば慰めてくれます。

けれどそこに、“人の心の温かさ”や“人間らしい体温”を感じられるかと言うと、断言できません。

相手のことばの裏に隠された本音を見抜き、心に本質的に寄り添うことができるのは、やはり人間のなせる業ではないでしょうか。

 

とはいえ、忙しい日々のなかでこなすべき業務に追われ、ゆっくり患者さんの話を聴く時間を確保するのが難しい現実もあると思います。

それでも患者さんはわたしたちに「聴いてもらえる」という期待を確実に寄せています。

信頼の重み

患者さんやご家族のことばには、気になる症状や不安・希望など、さまざまな感情が混ざっており、それらを理路整然と話せることは少ないでしょう。

医師や看護師には話しにくいことが含まれていることも多く、そういった本音を言語聴覚士がリハビリの一場面で受け止めることもあります。

 

「なにかを改善してほしいわけじゃない、ただこのもやもやをだれかに聴いてほしい…」

そんな本音を吐き出すことができたとき、患者さんは「この人に話してよかった」「心が軽くなった」と感じるのだと思います。

そしてそういった「吐き出せる場所」「本音を話してもいい人」としての役割を担うためには、それだけ信頼されなければならないということです。

 

ただ、それは同時に、信頼の重みをわたしたちが背負うということでもあります。

聴きながらも、「相手の期待に応えられているだろうか」「間違った受けとめ方をしていないだろうか」と緊張がつきまとった経験、きっとありますよね。

ただ耳を傾けるだけではなく、そのことばのチョイスや表情、視線の揺らぎ、指先の震えなど、細部にまで気を配って相手の意図を汲み取ること。

それと同じくらい自分の細部に神経を集中し、こちらが発する相槌、うなずき、表情、間の取り方などにも気を抜かない真剣さが必要です。

 

患者さんもご家族も、すべてを敏感に感じ取られます。

どんなに仲が深まっても、わたしたちは家族や友人ではなく言語聴覚士として患者さんと関わっている以上、コミュニケーションを疎かにしてはいけないと思うのです。

“聴くプロ”であり続けるために

「聞く」という行為自体は、顔をそむけていても成立します。

けれど話す側としては、きちんとこちらを見て、視線を合わせながら、意識までを向けてくれた聴き手に心を開くものです。

これが、AIにはむずかしいところだと思います。

 

さらに一段階上を目指すなら、常に振り返りも必要です。

 ・予め答えを用意していなかったか

 ・相手の発言を誘導していなかったか

 ・相手が本当に伝えたかったことを受けとめられたか

こうした問いを自分に対して繰り返すことで、“聴くプロ”としての姿勢や技術が磨かれていくのだと思います。

 

言語聴覚士にとって聴くことは、単なる情報収集ではなく、信頼関係を築くための基盤でありリハビリの出発点でもあります。

“聴くプロ”として見られていることを誇りに思いながらも、その期待に応え続けるために、患者さん側からも耳をすまされていることを自覚して関わっていきたいところですね。

執筆者:渡邉睦美(言語聴覚士)

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