片耳難聴のリアル
2025/10/28
こんにちは、plus-STの渡邉です。
言語聴覚士のみなさん、片耳難聴(一側性難聴)の方と関わったことはありますか?
わたしは自身の担当患者さんとして出逢ったことはないのですが、先日とあるイベントでたまたまお会いしました。
そこで、片耳難聴のリアルと当事者団体について紹介します。
目次
片耳難聴とは
片耳難聴とは読んで字のごとく、左右どちらかの聴力だけが著しく低下している状態のことをいいます。
先天性の場合もあれば、突発性難聴などが原因となって後天的に片耳のみ難聴になった方もいます。
そんな片耳難聴、言語聴覚士であればその不便さは容易に想像がつくのではないでしょうか。
音源の方向がわからないためとっさの判断が鈍ってしまったり、騒がしい場所での会話が難しかったり…
難聴全般に言えることですが、見た目にわかりにくいため周囲からの理解が得られにくいという側面もあります。
たまたま知り合った当事者の方は後天的に右耳の聴力を失ったそうですが、最初に戸惑ったのは電話だと仰っていました。
右利きのため右手で受話器を持つのが自然だったため、電話の際「あぁそうだった…」と持ち替える度にチクリと胸が痛んだと言います。
また、わざわざ難聴であることを明かすほどでもない状況での自分の振る舞いがどう見られているか、気になったこともあるそうです。
大勢の人が行き交う駅で臨時のアナウンスが聞き取れず、耳の位置を調整して聞き取ろうと試行錯誤していたところ、キョロキョロと周囲を見まわす不審者として見られていないか心配になった、と笑われていました。
「昔の話だよ、今は慣れたもんだね!」と仰っていましたが、その笑顔の裏にどれだけの努力や葛藤が隠されているのかと思うと、尊敬せずにはいられません。
立ちはだかる壁
そんな片耳難聴、よく耳にする課題として「身体障害者手帳の交付が受けられないこと」が挙げられます。
ご存知の方も多いかと思いますが、難聴で障害者手帳の交付を受けられるのは、原則として両耳が障害されている場合です。
片耳がまったく聴こえなくても、もう一方が正常なら手帳の交付対象外となります。
左右で聴力差があり、悪聴耳90dB以上かつ良聴耳50dB以上の難聴であれば6級に認定される可能性はありますが、これは両耳の難聴といえる状態ですよね。
そのため、片耳難聴の方は日常生活で困りごとを多数抱えていても、手帳を交付されることで受けられる恩恵(割引制度など)を受けられません。
一方で、【障害手当金】という一時金制度があり、厚生年金加入者で条件を満たせば受給できる場合があります。
また、自治体によっては補聴器の購入などに際して独自の支援を行っていることもあります。
もしも身近に片耳難聴の方がいらっしゃるなら、ぜひ情報提供してあげてくださいね。
当事者団体
片耳は聴こえるということから、見た目にわかりにくい上に日常の困りごとを軽視されがちな片耳難聴当事者のみなさん。
街で「もしかして…?」と思っても「あなた片耳難聴ですか?」なんて声をかけるわけにもいきません。
けれど、同じ悩みを共有し、情報交換したり学んだりできる場があれば、きっと心も軽くなりますよね。
同じ境遇の人が集まれば、片耳難聴をよく知らない方への啓発もぐっと勢いに乗ります。
そこで、片耳難聴当事者団体をご紹介しましょう。
片耳難聴に関する情報の記載、イベントの開催のほか、オンラインでの相談にも対応されているようです。
代表の方は言語聴覚士で、片耳難聴当事者でもあります。
気になる方はぜひサイトを覗いてみてくださいね。
執筆者:渡邉睦美(言語聴覚士)
このコラムでは、臨床や経験に基づくこと、豆知識、問題提起など様々なトピックを扱います。
執筆者は企画の和久井のほか、色々な職場・働き方・ジャンルで活躍されている言語聴覚士に依頼していく予定ですので、リクエストもお待ちしています。
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