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訪問看護ステーションでのエピソード

2024/11/16

こんにちは、plus-STの渡邉です。

今回で5本目となる訪問リハシリーズの締めくくりに、訪問看護ステーションでの思い出深いエピソードをまとめてお送りします。

他ステーションでの実習

私が入職した訪看はリハビリ部門を立ち上げてまだ2年目で、言語聴覚士の入職は初めてでした。

また、近隣に訪問言語聴覚士はおらず、右も左もわからない状態でのスタートです。

最初半年ほどは手探りで業務を進めていましたが正解がわからない日々に限界を感じ、コンサルティング会社を通して遠方の訪問看護ステーションにて実習を受ける運びとなりました。


早朝、在来線と新幹線を乗り継いで降り立った地は、通勤ラッシュの愛知県。

お世話になった訪看は、小さなビルの1階にありました。

徒歩・自転車・自動車・電車を使って訪問しているところで、看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が在籍しています。

頻繁に外部からの実習を受け入れておられましたが、言語聴覚士の実習は珍しいとおっしゃっていたのを覚えています。

丸1日言語聴覚士の方に同行させていただいた他、計画書・報告書を見せていただいたり、ランチミーティングを見学させていただいたりしました。


訪看で働きはじめて半年ほど経過していたこともあり自身のステーションと比較しながら見学でき、自分に足りない部分のほか強みにも気付けたことは大きかったです。

たった1日ではありましたが、内部まで包み隠さず共有してくださったみなさんにはとても感謝しています。 他ステーションで同じように日々奮闘する言語聴覚士の方を間近に見て、モチベーションアップにも繋がりました。

はじめての小児

転職前の病院は維持期を中心としていたため、成人のリハビリしか経験がありませんでした。

学生時代から小児分野にはあまり興味がなく実習地もすべて成人を選択しており、教科書レベルの知識しか持ち合わせていません。

そんな私が、訪看ではじめて小児を受け持つことになりました。

人工呼吸器管理の幼児で、看護師とともに訪問し入浴介助や口腔ケア、言語聴覚療法を行います。


初回訪問時、それはそれはガチガチに緊張しました。

見慣れているはずの呼吸器の蛇管も、小さな身体に繋がれているとまったくの別物に見えたのを覚えています。

当時独身で子育ての経験もなかった私は、幼児のおむつ交換でさえもドキドキ。


「患者様や利用者様からすれば、担当する言語聴覚士が新人であろうとベテランであろうと関係ない。だからこそ、しっかり準備したあとは専門家として堂々としていないと、患者様・利用者様は不安を感じてしまう。新人だから…は免罪符にはならない。」


との恩師の教えも、このときばかりは消え去り…。

幸いにも優しく理解のあるお母さまだったので、正直に経験がないことをお伝えし、同意いただいた上で本当にいろいろなことを教えていただきました。

はじめての小児がこのご家庭だったおかげで、経験を積み成長できたと思っています。


その後も、訪看には小児の依頼が多数舞い込みました。

乳児期から介入することも珍しくなく、かわいい赤ちゃんたちから小児訪問看護についていろいろなことを学ぶ日々でした。

まるで孫を待つおじいちゃん

最後は、私の最多訪問回数を記録したお宅です。

利用者様の90代男性とその妻、子ども2人のご家庭でした。

難病と診断され、最期の日々を自宅で…と退院されてきた方でしたが、訪看と通所介護を利用するうちにみるみる回復されていきました。

そんな折、嚥下にも不安が出て来たとのことでご依頼があった方です。


初回訪問時からにこにこと出迎えてくれ、笑顔がお顔にしみついたような優しいおじいちゃんでした。

訪問すると「さぁさぁさぁさぁ!」と居間へ誘われ、さくっとメニューをこなされます。

それが済むと「待ってました!」と言わんばかりに、晴れていれば自慢の畑へ。

歩行も呼吸も不安定だったためこちらとしては気を張る時間ではありましたが、ご本人はこの時間を毎週楽しみにされていました。

奥様と2人で毎日少しずつ手入れをしているという畑には、立派な野菜が鈴なりです。

それをシルバーカーいっぱいに収穫する姿は、とても最期を言い渡された人には見えませんでした。


奥様も毎回「いつもありがとうねぇ!」と明るい方で、「あんたらが来てくれるおかげでお父さんみるみる元気になったんや~!」と声をかけてくださいました。

ご主人と一緒に畑まで出られることもあれば、ご友人と賑やかに談笑されていることもあり、こちらも笑顔がすてきなご婦人です。


正直に書くと、おそらくこのご夫婦はリハビリを受けることよりも、孫のような年頃の私たちが訪問すること自体を待っていてくださったのだと思います。

リハビリの方がおまけであり、私たち訪看職員との交流を楽しまれていたように感じるのです。

そういった方は少なくなく、もちろんリハビリに一生懸命取り組まれますが、私たちの訪問が生活の彩りでありよい刺激になっていると評価いただくことが多かったです。

たとえリハビリがメインでなくとも、私たちを待っていてくださる利用者様の笑顔にこちらの方が元気を頂いていました。

さいごに

訪問リハシリーズとして、5回に渡って転職のきっかけから訪看時代のエピソードまでお送りしてきました。

訪看で働くことについて少しはお伝えできたでしょうか。

それぞれの職場に特徴ややりがいがあると思いますが、訪看勤務を検討されている方の参考になれば幸いです。

このコラムでは、臨床や経験に基づくこと、豆知識、問題提起など様々なトピックを扱います。
執筆者は企画の和久井のほか、色々な職場・働き方・ジャンルで活躍されている言語聴覚士に依頼していく予定ですので、リクエストもお待ちしています。
コミュニティもしくは 「お問い合わせ」フォームまで、皆様のご意見・ご感想をお待ちしています!

執筆者 渡邉睦美(言語聴覚士)

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