認知心理学とは ー心理学と言語聴覚士ー
2024/10/1plus-STの和久井です。
最近は長い記事が続いたので、今日は認知心理学についてサクっと触れます。
目次
『心理学』の授業で触れた【言語聴覚士】の存在
『認知心理学は、「認知症」の心理学ではありません。』
基礎から学ぶ認知心理学 人間の認識の不思議 あなたの直感はどこまで信じられるか? より引用
私は、青山学院大学文学部心理学科(現在は教育人間科学部の心理学科)を卒業後に、言語聴覚士の専門学校の大卒専門課程を卒業し、言語聴覚士を取得しました。
何度かオンラインのイベントなどでもお話したことがありますが、心理学科の授業のなかで「高次脳機能障害学」という授業があり、そこで初めて【言語聴覚士】という資格、職業を知り、国家資格であることに惹かれ、尚且つ今までの学習が100%役に立つと確信して言語聴覚士の養成校に進みました。
というのも、専門としていたのが「認知心理学領域」であり、関連する講義を多く受講していたからです。ただ、興味を持って勉強していた認知心理学の知識が医療の分野で活かせるとは本当に知らなかったため、その授業に出会っていなかったら臨床心理士を目指していたと思います。
時々、母校の授業でゲスト講師をさせていただくことがありますが、先日の私の講義を聴いて言語聴覚士に興味を持ち、最終的に進路を変えたという学生さんの報せを受け、本当に嬉しかったです。
認知心理学とは?
日本認知心理学会ホームページ
”認知心理学とは人間の心、特に知覚、記憶、思考、言語、学習、意思決定、行動選択などの認知の働きを解明することを目的とする心理学の一分野である。近年は、発達心理学、社会心理学、臨床心理学、神経心理学の周辺領域のみならず、哲学、工学、医学、芸術学などの広範な学問領域へも接点を広げている。さらには、産業界などとの連携も深まってきており、人間の知的な心の働きに関する学問分野として、今後も、ますます研究の進展が期待されている。
日本認知心理学会は、認知の働きに興味を持つ心理学者、関連分野の研究者、社会で認知に関連する実践を行う研究者、開発者などが集い、新しい発見を目指す場である。”
認知心理学は、人間がものごとを認識するしくみを科学的に明らかにする学問です。
(前述の参考書より引用)
例えば、新しいことを学ぶ時に情報をどのように記憶し、再生するのか、あるいは何か問題に直面したときにどうやって解決策を考え出すのかを理解するために、認知心理学ではその背後にあるメカニズムを解明しようとします。
基本的な考え方は、人間の脳がコンピュータのように働くというものです。
外界から情報を取り入れ、それを処理して記憶に保存し、必要に応じて使うという過程を踏んでいるという考え方をします。
言語聴覚士の仕事と異なるのは・・・
ここで感じるのは、「え?高次脳のことを考える言語聴覚士のアタマの中と何が違うの・・・?」です。答えは、どこの教科書にも書いてありませんがおそらくほとんど変わりはないです。
心理学というと、臨床心理士のような、「カウンセリングや心理療法を行う専門家」といったイメージが強いと思いますが、「心理学」という大きな学問のくくりで考えるといろいろな分野があります。
※青山学院大学 心理学科 学びの特色とカリキュラム より引用
https://www.aoyama.ac.jp/faculty/ephs/psychology/curriculum.html
認知心理学という分野のほかに、発達心理学、社会心理学、臨床心理学などがあります。「基礎的」な事柄を扱う認知・言語・学習・社会・発達心理学などに対し、臨床心理学や犯罪心理学などは「応用的」な心理学と呼ばれたりします。ただ、その境目や区別は明瞭にするものではなく、それぞれ研究するうえで、基盤となるメカニズムを解明しようとするのが「基礎的」心理学であり、『その人』にアプローチしようとするのが「応用的」心理学だといえます。
学習・言語心理学の分野は、人間の、基盤となる情報処理過程や言語学習などを主に研究する分野なので、言語聴覚士とは主とする対象が若干異なります。
医療機関における『臨床心理士と言語聴覚士の違い』は、当然明らかですが、ただ、基本的な頭の中での分析過程はかなり似ているのではないでしょうか?
基礎心理学の勉強をしている方には超おすすめ資格、言語聴覚士
言語聴覚士は、その教育課程で医学知識はもちろんのこと、主に高次脳機能障害をみるために心理学についても学ぶことになっています。驚くほど、「今まで勉強してきたこと」ばかりでした。
学んできたことを100%活かせる国家資格ですし、全国にまだ4万人弱しかいません。
特に小児領域は昨今とてもニーズが拡大していて、言語聴覚士はまだまだ売り手市場です。
(報酬面についてはいったん置いておきます)
今は病院が中心ですが、訪問、外来、教育機関、児童発達支援事業所などかなり職場と働き方が拡がってきています。『言語聴覚士が増えること』が、一番の希望です。
気になった方は、ぜひ検索してみてください。
【おまけあとがき】
(以下引用)
”認知心理学は、「認知症」の心理学ではありません。
認知症とは、認知機能が障害を起こした状態です。その意味で、認知心理学は認知症と深い関係がありますが、認知症患者の臨床的ケアを扱ったりするわけではありません。
認知症によって、「認知」という語の認知度は間違いなく高くなりましたが、その代わり、最近の講義では、まずは認知心理学と認知症の関係から説明する必要が出てきました。”
(引用ここまで)
冒頭で引用させていただいた服部雅史先生の本の一節ですが、2004年に「認知症」ということばを使うことが始まり、私が大学を卒業したのが2007年ですので・・・確かに今となっては「認知」と言われると認知症のことを思う方が多いんだな、とハッとしました。
このコラムでは、臨床や経験に基づくこと、豆知識、問題提起など様々なトピックを扱います。
執筆者は企画の和久井のほか、色々な職場・働き方・ジャンルで活躍されている言語聴覚士に依頼していく予定ですので、リクエストもお待ちしています。
コミュニティもしくは 「お問い合わせ」フォームまで、皆様のご意見・ご感想をお待ちしています!
執筆者 和久井和佳子(言語聴覚士)
【略歴】
2010年 言語聴覚士 取得
・公益社団法人発達協会(療育指導)・東京さくら病院(回復期病院)
2014-2022年 順天堂東京江東高齢者医療センター
・施設訪問自費リハビリ(業務委託)・支援学級指導員(非常勤・東京都)
・訪問リハビリ(非常勤・東京都)・児童発達支援事業所(非常勤・東京都)
2022年10月〜 新浦安内科・脳神経内科クリニック(常勤・外来リハビリ・千葉県浦安市)